No.106 たそがれ清兵衛

どうも最近「たそがれ清兵衛」がとても気になる。 もちろんずっと存在は知ってたんだけども、なぜか理由もなく甘く見ていたのだ。 ここのとこ邦画に面白い時代物がなかったせいか、藤沢*山田という組み合わせにすら大して反応しなかった。 しかし最近、これまた理由もなく「いや、これはなにか本物の匂いがするぞ」というおもいが高まってきた。 理由がないこともないんだけれど、決定的な情報がはいってきたわけでもなく、なんとなく連続して積み重なった情報に妙に確信がもててきたのだ。 「これはとんでもなく面白いはずだ」って。

一緒に住んでるだけあってさぽも同じ感じで盛り上がってきてて、今晩観に行こうということになった。 最近さぽが気付き、ぼくのなかでもこれはすごい!てことになった「暮らしの手帖」で3ページくらい評論されてたのが決めてとなった。 これはこんど触れるけれど、「暮らしの手帖」ってのはホントに面白いようだ。 まさにこの一冊が欲しかったってぐらい良質な情報がすばらしいエディトリアルデザインでぽっくり焼き上がってる感じ。 こういういいものがあったか。  でもって先週に引き続きソラリスのレイトショー。 週末ワインもいいが、こっちはイベントとしてメリハリがあってもっと楽しいかも。 週末レイトショーを毎週恒例にしたいくらいだ。 まぁ、そんなにコンスタントに良作が上映されてるわけでもないけれど・・  ちょっと時間に余裕がなかったからコンビニでパンなど買い、霞城セントラル(ソラリスが入ってるビルね)の窓際にイスとテーブルが用意されてるスペースで簡単に夕食を済ませる。 食べ終わって食後のラミーを楽しんでいたら、あと5分で始まるって時間にいつのまにかなっててふたりあわててソラリスへ。

年輩層に人気があるとは聞いてたけど、ぼくら以外ほんとにおじちゃんおばちゃんばっかで、こんな状況もなかなかないなとちっとおもしろかった。 予告もその層をターゲットにしたような映画ばっかりで、なるほどなと感心。 さて本編。 すばらしい。 あんまり面白くてふたりして腰がぬけた。 間違いなく今年ナンバーワンの映画だわ、こりゃ。 やはり日本人に一番しっくりくるのは邦画でしかありえないってことをひさびさに思い出した。 庄内(山形の北の方)が舞台ってことも感情移入の要因としてあるのかもしれないけれど、なによりこんなにすみずみまで注意がいきとどいた丁寧なつくりの映画を始めてみたとおもった。 まず役者がすべて完璧といえるほど適役だったとおもう。真田広之、宮沢りえ、それに余吾役の人、この3人がまず強烈にすばらしい役者だった。真田、宮沢に関しては、これほどまでにいい役者だとは思ってなくて、この映画で大好きになってしまった。 余吾役の田中泯という人はぼくらふたりとも知らない人だったけど、その演技にべた惚れした。 なんて空気を創りだせるひとだろうか、このシトは。 その他の役者もみんなすばらしい好演で、山田の演出もあってか子役のふたりの存在感も信じられないほど自然で現実味があり、愛さずにはいられない家庭の空気をつくりだしていて、この映画の根底にながれる「誠実であることのステキ」の象徴になっていたとおもう。 特に下の子がうんとかわいくて、この子のこの自然なふるまいったらなんだろうと驚きっぱなしだった。 藤沢の原作では、実は清兵衛には娘はいない設定らしいのだが、この映画は「たそがれ清兵衛」「祝い人(ほいと)助八」「竹光始末」の三つの話がミックスされた形で脚本がかかれていて、唯一「竹光始末」の主人公には子供がいるらしい。ただ映画の子供ほど、その存在感はないというから、ぼくは原作をしらないがこの演出は大成功だったのではないかと思う。 ほんとに隅々まで丁寧に作られていて、それは台詞だったり、殺陣だったり、ちょっとした役者の動きなんかにも表れているのだが、ぼくが特に印象的だったのは余吾の「目」だ。 家の中で戦うことになり、じりじりと間合いを伺っているさい、余吾がほんの一瞬だけちらりと目を上にむけるのだが、ん?なんの伏線だろうとおもってみていても特に上に何かあるわけでもなく戦いが始まる。 あ! なるほど! 天井の高さを計ったんだ、とすぐに気付く。 ほんとに、ほんの一瞬のちょっとした演技なのだが、それだけでそこに歴戦をくぐり抜けてきた手練の剣士が急激に現実味をもって存在しはじめたのだ。 これはほんとにすごいなとおもった。 そういった細やかな注意力でもってなされた演出がそこかしこにちりばめられ、そしてもちろん全体にながれるこれでもかってぐらいの「幸せ」なムードによわされ、もう2時間ずっとふたりしてめろめろ。 こんな極上映画を見ない手はないので、まだ見てない人はほんとに見た方がいいとおもう。 あまりの良さに絶対腰を抜かすはずでがんす。 これはひさびさに自信をもって万人にすすめられる映画でがんす。 今夜はほんとにいいもん見させてもらったでがんす。 映画の神様に感謝!  しぇば、良き週末を!

ちなみに本日はさぽ彩色担当。

2002-12-13-FRI

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