No.205 科学が戦争を認めようと、ひとりのアホとして頑なに否定するぞ、と。

家にかえると、セルビアの首相ジンジッチの暗殺のニュース。 そしてさぽは休み1日を「映像の世紀」にあてたらしく、第一次大戦勃発〜第二次大戦終結までの8巻をちょうど見終わったところ。 さらにチボー家は1914年7月26日のフランス、まさに第一次大戦開戦前夜という時期である。 いやでもセルビアの銃撃は世界大戦の始まりを予感させる。 以下は「チボー家の人々 −1914年夏(2)−」、アントワーヌの家におけるフィリップ博士の言葉からの引用である。 孤高なマゾヒストが、開戦前夜のヨーロッパの状況を分かりやすく、あっさりと語っている。

「大部分の場合交戦国は、双方とも、相手かたの意図の見あやまりにもとづく、意味のない猜疑心と恐怖とにかられていたきらいがありますな…… 一国が他国におどりかかる、その十中の九分までは恐怖心にもとづいています…… つまり臆病な男同士が、夜、歩いていて行きちがう。そして、すれちがおうとしてためらっているうち、とうとう両方からとびかかってしまう。両方が、やられそうだと考える…… 両方が、たとい危険はあるにしても、ぐずぐず迷ったりするより、いっそひと思いに飛びかかっていったほうがいいと思う。 あれと全然おなじですな。 いやはや、じつにこっけいですな… ところでいまのヨーロッパをごらんなさい。 まったく亡霊にとりつかれています。 いずれの国もびくびくしている。 オーストリアは、ロシアにたいしてびくびくしている。 国威を傷つけられやしまいかと思ってびくびくしている。そのロシアは、ドイツにたいしてびくびくしている。 受身でいると、弱みがあるからだと思われはしまいかとびくびくしている。 ドイツはドイツで、コザックの侵入にびくびくしている。 まごまごすれば、包囲されはしまいかとびくびくしている。 フランスはドイツの軍備にびくびくしている。 そしてドイツはドイツで、危険にそなえてびくびくしているからこそ軍備をする…… そして、あらゆる国々が、平和のためにすこしの譲歩もしようとしない。 つまり、びくびくしていると思われやしまいかと思っている……」

このあとジャックは、老人のこうした体質的な潔癖さからなる、「全ては無駄な戦いである」という捉え方に賛意を見せ、以下のように続けるが、老人はほとんど人の話など聞かないで自己完結してしまう。 以下、ジャック・チボーの言葉からの引用。

「そして」 「そのびくびくの状態を、自分たちのためにつごうがいいと認めている帝国主義の国家だけが、それを念入りに助長させているというわけなんです! 数ヶ月このかたのポワンカレ【当時の仏首相】の政策、フランスの内政、これは、国民のびくびく状態を組織的に利用しているもの、と言いきれると思うのですが……」

2003-03-12-WED

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