No.677 ぬけがけホタル

ホタルなんだけど、こないだはどうやら時間帯が遅かったようなのだ。 時期的にはばっちりだったんだけど、いったのが11時過ぎではもうゲンジボタルは寝ているのだそうだ。 一番活性の高い時間帯は20〜22時くらいという情報を聞き、時計をみると20時20分。 もういてもたってもいられず、大興奮で馬見ヶ崎上流へすっとばす。 ぼくは明日この状況を「大興奮で馬見ヶ崎上流へすっとばす」と書くんだろうなと、未来の自分の文章に今現在のリアルな自分の状況が支配されてる不思議な感覚を楽しみつつ、ほんとに「すっとばす」らしくすっとばす。 空はどんより曇っていて、20秒おきくらいに雷が光っている。 閃光の筋は見えず、空全体、景色全体がフラッシュする光方で、音はしていない。 雨がふったらイヤだなとおもいつつすっとばすこと30分、ようやく到着。 なんとなく雨はふりそうもない。 雷の光の感覚は10秒おきくらいになってきた。 道路にはすでに数台車が停まっていて、ぼくと同じタイミングで家族連れが車から出てきた。 懐中電灯も持たず、闇の中にすたすた歩いていくぼくをここの常連客とおもったらしく、おかあちゃんが「ここをまっすぐ降りていくといるんですか?」と聞いてきた。 まあぼくもまだ見ていないし、今日も見れるかわからないから「いる」とはいえず、「いる場所はこの下だよ」と答え、また闇の中にすたすた歩く。 すると、懐かしい光が二粒、ふわふわと飛んでいる。 「いた!!」 うしろの家族に教える意味もこめて、声に出して大感激。 いたよ、いた。 うれしい。 心臓ばくばくでさらに道を降りていき、ひらけた所にでる。

ちびった。   美しすぎた。    なんだ、ここ。    もう言葉を失って、ただただ立ちつくしてしまった。 右手の池にも、左手のやぶにも、無数の、小さな、うんと明るい光の粒が、ゆ〜〜〜〜っくり飛び交う。  こんないっぺんにホタルを見たのは初めてで、魂を抜かれたみたいになってしまった。  隣にたったおじちゃんも言葉を失い、ぼくをはさむように位置するその奥さんであろうおばちゃんも「すごい、すごい、自然にはかなわない」とつぶやき、ぼくは言わなくてもいいこと口にするなと意地悪なことも全然思わないで、「ほんとにそうね」と応え、おじちゃんから「ここは8時半から9時半くらいの1時間しか光らない」ということを聞き、なんとタイミングのいいことかと喜び、おじちゃんとおばちゃんが帰ってからもその場を動けずずっと立ちつくしていた。 つねに3〜4パーティくらいがいて、それが10分くらいの滞在で入れ替わる。 どんどん新しい悲鳴が聞こえてくる。 自分のなかでその光景が当たり前のようになってくると、わざと反対側を見たりして客観視し、感激をリセットしてこの尋常じゃない様子を尋常じゃない様子として楽しみなおす。 やっぱり尋常じゃない。 ほんとにすばらしすぎる。  このテンポ。  そして忘れちゃいけない、空には雷。 2大自然の光の美の贅沢なコラボレーションなのだ。 まあ、ほんとはホタルに集中したいので邪魔なフラッシュなのだがそこは考え方を変えて楽しんだ方がいい。 ほんとに邪魔なのは帰りたがる子供の声と無駄に照らす懐中電灯なのだが、それすらも許せてしまうような心の高揚。  それでも誰もいないところでこのシチュエーションを独り占めしたい欲求がどうしても沸いてきて、誰もいなくなるまで粘ろうと、池のほとりの葉っぱにホタルが4匹集まっているところを観察しつつ身をひそめ、客がいなくなるのを待つ。  ふと見上げたときに頭上に予想外に光があったりするととてもうれしい。 うんと顔の近くまで飛んできたときにはその予想外の明るさに驚く。 いろんな場所に飛んでいる昆虫の動きをここまでいっぺんに視覚的に捉えれるってのは、「きれい」とかとはまた別にすごいことだなとおもう。 だんだんと雷もおさまってきた。 1時間はいたのにまだホタルの活性はフェードアウトしない。 もう10時くらいじゃないかしら? しかし訪れる人もいっこうにフェードアウトせず、考えてみたらこないだのぼくらのように、何も知らずに夜中にきちゃうひとだっているんだから、いつまでたっても人が全く来ないなんて状況にはならないと気づき、最後のひとりになることをあきらめて変える。 まだ光っているのに帰るというのは、ものすごいごちそうを、まだ腹一杯になっていないのに残して帰るようなもったいなさがあってとても後ろ髪ひかれたが、またすぐにちゃんす先生をつれてこようと決めて帰る。 (今日はちゃんす先生福島に手伝いにいってていない)  感激さめやらぬまま家に帰ると、玄関の門のところでミミがちょこんとすわって待っていた。 ご飯くれるのぼくしかいないから、はらぺこでまっていたのだ。 いつからここにいたのか、ハチ公よろしくだいぶそこに長いこと座っている雰囲気だったもんだから、申し訳ないやらかわいいやらでたまらない。 すぐにごちそうをあげて、愛で、落ち着き、モストエフスキーに出かけ、帰り、フライの勉強をし、囲碁のリハビリをし、どうでしょうの新作を見、大満足で就寝。 ひさびさに3時まで遊んじゃった。 平日なのに。

2004-07-05-MON

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送