No.833 諸刃の剣

ひさしぶりに歩いて会社にいったらとっても気持ちよかった。 歩き通勤は断然冬が気持ちいい。 肌を刺すようなキンと張った冷気と、その澄んだ空気によるやたらクリアーな景色が、ランダムに再生される、はっとするような展開のインストゥルメンタルメドレーに実にマッチするのだ。 はたからみたらタダの会社帰りのおっさんなんだろうけども、ぼくの中ではとんでもないぐらいドラマチックなことになっちゃってて、すれ違う人すれ違う人がみんなものすごく自分にとって意味のある、重要でかけがえのない存在のように思えて、その映像はすべてがスローモーションで見えるのだ。 景色は自分の体の動き、首の動き、眼球の動き、瞬きの回数などで、どんな風にでもリアルタイム編集できるPVのようなもので、曲にあわせてザザザッ!とあとずさりしたり、横断歩道の真ん中で立ち止まってその場でぐるぐるまわりながら、一秒間に10回瞬きしたり、突然男子高校生の股の下に仰向けの状態で体を滑り込ませて、足首をつかんで逃がさないようにして、ドラムが激しくなるのにあわせて顔を上げていきペニスがアップになってきたところにその男子高校生のツレの蹴りがはいって画面暗転するのがばっちり曲の展開にシンクロしたことにたまらない快感をおぼえたりと、この世界をすべてネタにしたVJ的即興がたまらなくおもしろいのだ。 あまりにも空気が冷たいから、息を吸う鼻がだんだん痛くなってきて、それがだんだん頭痛に変わってくる。 これがまた冬歩きの醍醐味だ。 いやな頭痛ではなく、冷たいところに居るときだけの原因の明確な、痛みにもキレがある、刹那な頭痛。 セクシーな頭痛。  頭痛をおびてきたあたりからランダムに選ばれる曲もそれなりの要素を含んだ選曲になるからおもしろい。 1年も使い込むと機械も波長があってくる。 服が、気に入って上手に着れば着るほどにむこうから似合ってくるように、物質は物質として以上の感情をもってこちらから丁寧に誠実に接することで、なんと不思議なことにこちらの世界を理解することができるようになる。 こういうことをただ「電波」と一蹴する段階を超えたアタリから、世界が人生がいきなり数倍もおもしろくなった。  40分間のこの極上のリセットは、ぼくの「家での生活時間」を餌とするいじきたない冷血なやつでもある。 でもたとえ家で時間がなくてただ寝るだけになったとしても、冬の歩き通勤にはそれだけの価値がある。 ぼくが今年リボ払いまでしてうんと軽くて暖かいダウンを買ったのは、まさにこれのためなのだもの。 ああ、今日は時間がなくて車できちまったけれども、これを書いていたらどうしても歩いて帰りたくなって来ちゃった。 おいてくか…

2004-12-08-WED/p>

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