No.848 オビハチライブ

突然もらったライブのチケット。 なんだかよくわかっていないまま、家に帰り、パンを二かけら食べ、さぽとふたりで蔵OBIHACHIへ。 少々迷ったのち、無事到着。 丁寧に案内され中にはいる。 存在は知っていたけど、来たのははじめて。 古き良きモノを都会的に再利用した、まさにここ10年くらいに確立されたオサレ感でいっぱいだけど、それはそれでとてもすばらしいことだとおもう。 ほんとに。 こんなにちゃんとしてるものまでサブさをわざわざ感じてしまうと、もう裸の知的障害者が断末魔の叫びを挙げて死に直面している瞬間ぐらいしかうけいれられなくなるもの…  客層はコンサバティブな2,30代にナイスミドルがちらほら。 楽器をなにかしらかじっている風な人の率が多い。 今日の主役はブラジル音楽、その中でもBADEN POWELLにすっかり魅せられてしまい、そのまま音楽の道にズブズブとのめり込んだギタリストの渡辺幹男さんと、ドラムの吉田和雄さんのふたり。 で来年発売のボッサ・オルガニカというデュオアルバムの先行ツアー第一弾が、ここ蔵OBIHACHIということなのだそうだ。 おふたりは温泉とうまいものが大好きだそうで、山形への思い入れもかなり強い。 ものすごくインディーな、ものすごくローカルな感じかとおもいきや、吉田さんは小野リサのプロデュースでアントニオ・カルロス・ジョビンと一緒に仕事したりしているというからかなりびっくり。 で、もちろんふたりともめ〜ちゃ〜く〜ちゃ〜巧い! 一曲目のBADEN POWELLのカバーですっかりやられた。 や、正直いって、多少奇をてらった感がくさかったり、説明的すぎる音使いが鼻につき、おもいきりど真ん中というわけではないんだけど、たまにくるものすごく気持ちの良い瞬間があって、そういうのを味わってしまうともう基準がそこになってしまって期待せずにはいられない。 曲によってはポストロック(もはや死語か)的なおもいきりストライクなものもあって、めちゃくちゃ興奮させられるのだが、しかし次のオリジナル曲でどうにもトホホな音(いや、かなりかっこいいしうまいし情緒的だけど、なんつーか、わかりやすい、というかあかぬけない、というか美意識が基本的に「プラス美」なのね。「マイナス美」世代はどうしてもひくところがある)を同じテンションでやったりと、最後までかっこいいのかださいのかつかめなかったところがある。 しかし終始ものすごく気持ちよかったのは間違いない。 もうぼくはあんまり気持ちよくて顔がにやにやしてしまって、全細胞が複雑なリズムを追ってワキワキして、とんでもなく楽しかった。 しかもこの人ら、キャラがかなり面白くて、べしゃりも絶妙ないいかげんさでもって「笑い飯」を彷彿とさせるぎりぎりの破綻加減を操りきっていて、アカデミックなブラジルリズム講座までその飄々としたふざけたいいかげんさでもって完全にださくなくだるくなくやりきっていて素晴らしかった、おもしろかった。 おやじギャグ的なものや、とりとめない話をするときも、しっかりとブレなく、「おやじギャグ」「とりとめない話」として自ら扱えているから、自分らの作り出すサブさをこちらと一緒の方向からリアルタイムで一緒に馬鹿にするということがきちんとできているのだ。 対照的に助っ人で登場した若干23歳の若手ホープは、ギターはうらやましくてよだれがでるほどうまかったが、それ以外はもうすべてが垢抜けなくてかわいそうな感じだった。 あんなおもしろい二人といられるんだから、とっととなにか突き抜けて欲しいもんだ。 しかし、間近でプロの演奏を見るとすげー勉強になるわ。 自分のコードチェンジの癖とくらべることで、己のあらゆる問題点が一気に明確になる。 ぼくの右側にいたあきらかにジャズキチガイで、あきらかにどっかの社長みたいなおやじも音楽そっちのけで手の動きに釘付けだったのを見逃さなかった。 半ばぐらいで「森をテーマに作った」というオリジナル曲をやったんだけど、曲そのものはどう贔屓目にみても決して森は感じることが出来ず、なにが森かって、曲のイントロとエンディング部分で、なにやらみたこともないあちらのへんてこ楽器10種類も使って、ほんとにSEみたいな森の音(鳥の鳴き声や、ケケラケラケラというよくあるなにかの鳴き声や、川のせせらぎとか)をせわしなく吉田さんが再現していて、森をテーマというか、まんま森の音でやがんの。 そういうだささもふくめて(そのだささを本人たちも楽しんでいて、もっと高いところからニヤリとしているような小気味よさがぷんぷんしている)、とても愛すべきふたりでして、最後はまだ発売していないというそのCDを買ってサインしてもらってきました。  うは! いまこれをかきながらちょうど例の森の曲がヘッドフォンで流れているんだけど、やはりどう聴いてもこの曲は森じゃない。 そしていままさに終わろうとしているこのエンディングは、音楽的な意味ではなく、まさに森だ。 ほんとにあほだ(愛を込めて)。

2004-12-23-THU

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