仕事を終え、ウキウキで家に帰る。　今日はさぽとふたりで久しぶりに七日町界隈へ飲みに繰り出す。　会社で聞いた焼酎の美味しいお店へ雪の中向かう。　店に着き、なんだか細長くて「デザイン」された店内にちょっと辟易。　まあ美味しいならばと座ろうとしたら「すいません、ご予約ですか？」と聞かれ、「予約なんかしとらんよちみ」と応えると、体よく追い出された。　なんだよ、こっちだってそんな無機質でカウンターしかないようなオサレぷんぷん和風気取った店でなんか飲みたくないんだよ。　客層も全身クロムハーツみたいな奴ばかりでかえって満席でよかったよ、ちえ。　というよりも、とても高そうなお店でございました。

気をとりなおして次なる店を探すも、ぼくらここらへんで焼酎の品揃えの良い店なんて知らない。　途方にくれているとさぽがなにか思い出して、七日町メインストリートへ歩き出す。　ナナビーンズの向かいに半年前くらいにそば屋だった箱そのままで飲み屋がオープンしたらしく、外からやたら大量の一升瓶がみえるもんだから、さぽは仕事の行き帰りでとても気になっていたのだそうだ。　店の名は「でんでん」、あのでんでんとは全く関係ない。　古くてやさしくて実にいいたたずまいの店だ。　中にはいると壁中に飾られたその酒瓶の数にまず驚く。　そして次に注文をとりにきてくれた妖精「あいちゃん」にさらに驚く。　めちゃめちゃ純粋でめちゃめちゃきゃわいくてめちゃめちゃ鋭くてめちゃめちゃ不思議な、薩摩の女あいちゃん。　娘は皆嫁に出て、いまはアパートに一人暮らし、真っ黒な長い三つ編みには椿油をたっぷりつけて、夜中に仕事を終えて１時間以上かけて歩いて帰り、毎晩お国の大衆焼酎をコップに２杯飲んでから眠るというあいちゃん。　あいちゃんはわからないんだかわかるんだかあったかいのか平気なのかまったく判断のつかない「自然の雫」みたいな存在で、ぼくもさぽもこんな神憑りな純朴さをもった人間をこれまでみたことがなかったもんで、ふたり、とにかくあいちゃんの虜で、本当に、心から、日々、あいちゃんにとって幸せなことがたくさん起こりますようにと強く思った。　森を無条件で愛するように、空をみてわけもなく「最高だ」と感じるように、あいちゃんだけはとにかく幸せでいなければならないとおもった。　この人は奇跡だ。　　さてその奇跡に焼酎のロックをふたつ注文。　ふたりで別々の芋焼酎を注文。　これがうまい！！　銘柄を忘れてしまったのが悔やまれるが、いつもありがたがって飲んでいる天地水楽ととても似た味構造で、あちらの方にはこんなレベルのがゴロゴロしているものかとうらやましくなる。　さぽのはまた全然違う味構造で、いったん水みたいに通り過ぎてから、すごい勢いでぬめらほわっと甘みと辛味がきて、かなり気持ちの良いかっこいい味だったので、ぼくは二杯目にそれをたのんで、さぽは黒糖焼酎をたのんだ。　さぽが２杯目に頼んだ確か「朝日」だかいう黒糖焼酎がこれまた当たりで、芋とも麦とも違うその味にふたり嵌ってしまう。　料理も海ぶどう（ぷちぷちとろりの海草）とかなんだかエイリアンみたいなおそろしい顔の魚の干物とか蒸しホヤを炙って食べたりだとか塩味のモツ煮だとか塩鯨だとか自家製塩辛だとかあれだらこれだら、とにかく全部「肴」になるものばかりでとても美味しい！！　純粋に焼酎の味を楽しみたかったぼくらにはまさにうってつけのメニュー群で、あいちゃんも含め、一発でこの店大好きになってしまいました。　千円もって、焼酎ロック一杯とホヤ焼きとか注文して、カフェ的に使いたいとおもった。　４時くらいからあいてるらしいので、ほんとにさぽちゃんすなんかはそういうことができる。　いいなー。　最後にぼくは別の黒糖焼酎、さぽはなんだっけか、なにか乙の焼酎をたのんで、またまた暴れるおもしろい味に夢中。

帰りにもう一軒ひっかけていきたくなり、アロハナに寄ってビールだの飲む。　ビールをのんでタバコを吸ってしまったら、酔いのスイッチがいきなり入ってしまって急激に眠たくなる。　よせばよかった。　さぽもジュース的なお酒を２杯ぐらい調子にのって飲んでしまって、同様にスイッチがはいった。　本当は近所の周一の家にふたりで迷惑押しかけ嫌がらせ飲みをしようとおもってワクワクしていたんだけど、眠くてそれどころでなくなった。　かえってすぐにばたり。　　しかしすっかり焼酎にはまってしまったなー。　玄米の旨味を体で知ってしまってから、そして強い味付けのものや肉をほとんど食べなくなってから、そばやら焼酎やらが前にも増して繊細な感覚で感じられるようになってきて、本当に体の奥の方から「おいしい」と思えるようになった。　玄米丸餅なんかも、焼いてそのまま食べるのが一番美味しい。　そしてなんだかとても気分が良い。　ちなみに焼酎は全然次の日に残らないのがすばらしい！　一升あけてもすっきり起きれる。

2005-01-15-SAT