No.893 真昼のプリニウス

朝っぱらから髪を切ってもらって、さっぱり。 最近風を感じるほどの長髪がとてもうっとおしかった。 ほんとは全部剃ってしまって洗顔の延長で頭も洗うというのが理想なんだけど、つるつるではあまりにもキャラがうるさくなってしまうのでなかなかできない。  玄米餅を食べ、ひさしぶりに散歩がてらミミックへ。 いつもさぽから話を聞いていた、白鷹に住むうんと素敵な男女二人(夫婦ではなくあくまでパートナーらしい)がニット製品の展示販売をしていて、とても素敵な作品と、そしてとても素敵な二人の人柄が最近の忙しさでくさくさした気持ちを吹き飛ばしてくれた。 さぽも無印のお客さんとしてしか知らず、今日初めて話したそうで、帰り道ふたりして、なんと気持ちのいい人たちだろうと大絶賛だった。 「燃やせないものは買わない」という姿勢は「長い食べ物が大好き」ぐらいかっこよく、単にドロップアウト気取っているわけでなく、かなり高いレベルの生活スキルと表現力をもっていて、足りないものを補う場合のその学習スキルも相当なものだと話していて分かった。 2,3種類の語学を習得した後は新しい語学の習得が格段に早くなるように、ある程度の生活力を身につけた人というのは新しい事に対するフットワークが軽くなり、文字通りなんでもできるようになる。 なんでも。 ぼくらが求める究極のところはまさにそこで、ほんとになんでも自分でできるようになりたい。 とにかく地に足着いた生活力を身につけたい。 気持ちではほんとにいつでもそのことを思っているのだけど、現実は90%の時間をある偏ったスキルばかりつかうデスクワークに費やしているわけで、仕事に対する愚痴ばかりが増えて、なんとも悪循環。 がんばっていい仕事をして満ち満ちた後にもすぐ、こういうことをしている場合じゃないんじゃないだろうかという引き潮に足元をすくわれる。 もっと生活に、世界に密着したことに骨身を削りたい。

夕方からこたつでふたりでゆっくりまったり本を読んですごす。 が、昨日の夜も寝すぎたぐらい寝て、朝も遅かったのに、うちの眠り姫はそんなことお構いなしでなんと夕方6時にご就寝。 そっから一度も起きることなく、朝まで眠ったからすごい。 この子はしょっちゅう記憶は無くすし、たまに後頭部がべりべりはがれる感じがして気持ち悪くなるというし、そして今日みたいに異常に睡眠をとることがよくあるし、なにか脳の病気なんじゃないかと心配になる。 本人は冬眠冬眠と当たり前のようにしているからそんな心配もすぐに消し飛ぶのだが。  さぽが寝たぐらいから、真昼のプリニウスが終盤の盛り上がりにはいり、ものすごく面白くなってきた。 一貫して流れるテーマである、「世界を世界と感じた瞬間から、それはなにか物語性をおびてしまってホントウではなくなってしまうことへの違和感」との戦いが佳境を迎え、ぼくはひさしぶりに主人公なのか自分なのか、浅間山なのか緑町なのか本気でわからなくなるぐらい小説世界に入り込んでしまって、夢のようなラスト1時間を過ごすことができた。 あらゆる精神的伏線が気持ちよく繋がりまとまり、タイトルが意味を持ち始め、不意に投入されるエッセイ的エピソードがまたしてもそれらとねっとりと絡み、しつこいぐらいに描かれる主人公の感じる肉体的苦痛に伴う快感を自分の感覚のように感じはじめ、プチっプチっと気持ちいい匂いの粒がはじけるように主人公のぽつぽつ浮かぶ思いに共感し、もうなにがなんだかわからなくなってしまうぐらい頭がクリアになってなんでもかんでもわかってしまうような脳の状態にはいり、文字を追っているその時間があまりにも気持ち良かった。 ここまで爽快な読後感もひさびさだ。(前に草の上の朝食かプレーンソングでもこんな夢みたいなラストを感じた) うそくさいもの、うすく希釈して水増ししたもの、扱いやすく単純化してもとのリアルとはすっかりかけはなれてしまったものにすっかりみんなが乗っかっているばかばかしさに、常に過剰に嫌悪を感じるものとして、こんな気持ちのいい話はない。  この人の小説は、会話こそ現実離れした記号のような下手くそさ(わざとやってるのか?)でむずがゆくなるような癖(春樹的はずかしさ)があるものの、絵のタッチでこの漫画よめねーとかいってる奴を馬鹿だと見下す立場でやってきた意地でもってそこさえ乗り越えれば、ほんと、とんでもない骨太の名作揃いである。 まいった。 次はタマリンドの木。

2005-02-06-SUN

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