No.895 ミミのまん丸の白い輪っか

昨日おそかったので、今日は一時間シフトして出勤。 いつもよりおそくまで寝ていて、ようやく布団からでて立ち上がったぼくを見上げてミミが「あれ〜!?? なんでいるの? なんでいるの? なんでいるの? なんでいるの?」と、激しくからんできた。  と、ヒステリックに声を出す彼女の口から、突然、信じられないぐらい綺麗な、まん丸の白い輪っかがポコっと生まれた。 まん丸の輪っかはゆっくり上昇して、XZ平面方向に拡散しながら消えていった。  タバコの煙でなら見たことはあるが、寒いときに見える白い息が、こんな綺麗な輪っかを作り、そして形を保ったまんま消えていくのなんて初めてだったから、もう朝からうれしくてたまらなかった。  小学生の頃、とある自習時間、同じクラスだったちょっと頭のあったかい松木が、いつものようにみんなに「シカマツキ」とからかわれていて(シカマというクラスの女子を好きだという設定にしてこうやってからかうのが定番だった。そこには小学生なりの残酷さと同時に、愛情も多少あった)、そしていつものように松木は切れて、暴力という形で反撃しようとするのだが、ちょっと前に松木のヒステリックな暴力は先生から厳重に注意されたばかりで、松木もしばらくの自粛はやむをえないとおもっていたらしく、だれかが「あーー、松木、暴力いいんだっけがーー?」と、そもそもの自分の言葉の暴力などなかったことのように偉そうに、煽るように言い放つと、その言葉に松木は理性を取り戻し、持ち上げた椅子を投げるのをぐっとこらえ、おろし、しかし内側に満タンにたまった怒りのエネルギーはなにかで発散するまではどうしたっておさまらず、どうするかとおもったら松木は突然すたすたと教室前方の黒板に向かって早足で怒りのうなり声をあげながら歩き出し、白いチョークをとり、まっさらな黒板に、力一杯、なんの迷いも感じられない実に美しい動きでもって、「円」を描いた。  すさまじい怒りのエネルギーをまっすぐにぶつけたその純粋な円は、まさにその純粋さのとおり、コンパスで描いたような完全な真円であり、そのあまりの美しい出来事に、おもわずクラス中が感嘆の声をあげた。 「おぉぉぉぉぉぉぉぉ」  本当にあまりにも綺麗な円だったもんだから、みんな心から松木を褒め称え、一転して松木はその自習時間のヒーローに変わった。  ミミが吐きだした真っ白のまん丸の煙をみて、ぼくは小学生時代のこの大好きなエピソードを思い出した。

2005-02-08-TUE

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送