No.906 社葬

休み返上で社葬のお手伝い。 辺境の地で、ふきっさらしの雪の中、半日、わたなべくんとふたりでただ交差点に突っ立て居るだけ。 看板立てりゃすむことを、人間があえて苦痛に耐えている彩りを添えて見せることで、会社としての「誠意」みたいなものを参列者に感じていただこうというすばらしい感覚。 しかしぼくはそれほど嫌みな気持ちではいっていない。 ある部分でそれはちょっと素敵なことだとおもう。 ほのかにきれいなことだとおもう。  そのほのかにきれいなところだけをみて、静かに苦行に耐え抜く。  体が、こんなにも底から冷え切ったのは何年ぶりだろう。 差し入れてもらったぬるいお茶が、体の中を通っていくのがとてもよく分かる。 食道の形がはっきりと分かる。  葬儀開始の時刻になり、お役目終了。 回収の車を待つがいっこうに現れず、別の場所で同じ役割をする仲間にわたなべくんが電話をすると、ぼくら以外はすでに回収されて、テントでストーブにあたっているという。 おいおいおい。  すぐに巨根と名高いM氏が回収にきてくれて、ぼくらもテントであったまる。  予定よりはやく葬儀が終了、今度はお見送りの意味でまた周辺の道路の交差点にわれら部隊は散る。 目をこらして通り過ぎる車の車内を透視、黒い服の人には深々とお辞儀。 そうでない車(葬儀と関係ない車)は無視するという感覚が、まあ当たり前なんだけど、へんにひっかかり(VIPにのみ媚びへつらう漫画みたいなキャラに自分がなったようなおかしさがあって、その選別行為が妙に恥ずかしい)気持ちとしてはもう面倒だから通る車みんなにお辞儀したかった。 こんなんで申し訳ない、と。  すっかり冷えて家に帰り、本当はソウルソウルにいってふたりで酒を飲もうと思っていたんだけど、なんとなく今日はやめようということになり、異常に太いパスタを食べ、その食感に感動する。  英語の勉強がおもしろくて、夜中まで盛り上がり、さぽがついに寝てしまったのでぼくはひさしぶりに据置の綺麗な画面のゲームがしたいなとおもって1080°をひっぱりだして、ハーフパイプで遊んで、そして寝た。  静かに、こってりとした日だった。

2005-02-19-SAT

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