No.935 鈍行列車旅行二日目

いつものことだが、なぜか知らんが旅先での朝、目が覚めて布団でウダウダしてるときっていうのはなにかちょっと不安なもんだ。 楽しい1日がまっていると頭で分かっているのだが、そう思うと心の半分ではなにか強烈な不安感を感じるのだ。 布団を出てしまえば一気に心も体も楽しさだけで埋め尽くされてしまうのだが、なぜか布団に入っている間は会社の日の朝にまして不安だから不思議。 ぼくだけか?

時間で交代なので、昨日とは違う風呂に入れるってんで張り切って10階露天風呂へ。 これまた楽しい。 洞窟風呂や釜風呂なんてのまである。 「みんな共生しているんだから、虫さんが湯船にはいっておぼれていたらこの網ですくってあげましょう」といって網がおいてあるのもとても素敵。  部屋にもどり、今日の行動をざっくり考える。 最初エチゴビールにいって、それからフェリーに乗って佐渡に渡って民宿にでも泊まろうぜという夢のようなコースを考えたのだが、、さすがにフェリーの時間があるのでそれは無理(佐渡に着いたらもう夜ということになってしまう)ってことで、エチゴビールをあきらめる。 今回の旅のテーマは「移動を楽しむ」というところにあるので、こちらを選ぶのは自然。  そうと決まれば急がなきゃ。 今から一番近い便は9時30分発。 もう1時間もない。 支度をしてチェックアウトするころには8時50分。 まだフェリー乗り場がどこにあるのかさえ知らない。 ホテルのお姉ちゃんに尋ねたら、まず駅前のバスターミナルにいって、そこから佐渡汽船までバスでいかなきゃ行けないらしい。 駅まで歩いて10分くらいか。 しかしそこからタイミングの良いバスがあるか、佐渡汽船までどのくらい時間がかかるのか、乗船手続きはどのくらいかかるのか等々考えると、ほとんど9時近いこの状況はとてもやばいことに気づく。 これを逃すとあと3時間はフェリーはでない。 とにかく駅に急ぐ。 今できる努力はそれしかない。   さて、バスターミナルには意外とはやく付いたのだが、バス時間まで10分ほどある。 もったいない。 果たして佐渡汽船まで何分かかるのかもわからぬまま、そわそわと待つ。 ほどなくしてバス到着。 乗車。 出発。  信号に捕まるたびにあせる。 常識的にはもう間違いなく間に合わないだろうという感じなのだが、なぜか気持ちの奥の方では間に合うことを知っているかのような楽観がデンと気持ちよさそうに横たわる。 かずとゆきえの結婚式で知っている朱鷺メッセが見えてきた。 時間はもう9時26分とかそんなん。 そうだ、この先が佐渡汽船だったっけ。  もう目の前なのに信号につかまりいらだつ。 そして到着。 時間は29分。 おお!いけるか!?  走る。  いつもこんなだ。  まだフェリーは動き出していない。 窓口に駆け込み、まだいけるかと訪ねる。 ええ、いけますぜ、というなんともいい顔。 こういう時の、たとえば新幹線ギリギリの時なんかの駅員さんの顔とか動きってのはいい感じで得意げで、絶対の信頼を感じれて、大好きだ。 「ふたり乗船します」と無線で船の人に伝えてもらい、ぼくらはダッシュ。 ぼくらの後にさらに親子連れが「まだいけますか」と来て、それですこし安心。   間に合った。   朝からすごい充実感。 これだから楽しい。

フェリーは思いのほか楽しい。 建物のように広く、みんな雑魚寝してたり売店があったり、階段があって4階建てだったりして、外に出ればすごい数の人に慣れたカモメがかっぱえびせん目当てにほんとに目の前まで近づいてきたり、とにかくたまらなく楽しい。 あんまり楽しくて、地団駄踏んでしまうほど楽しい。 なんだこの幸福感は。  溢れる喜びをなんとかおさえ、ベンチ席で朝ご飯。 売店で買った鮭おにぎりと唐揚げがうまい!  お腹も満たされ、あらためて外に出て、空を、海を、波を、カモメを見る。 なんつー非日常。 すごい。 屋上にあがる階段を見つけ、興奮してのぼる。 おっちゃんがひとり、なにか白い箱状の床から生えたモノを背もたれ兼風よけにして、缶ビールを呑みながら本を読んでいた。 なんつーうらやましいことを!  うれしいことに白い箱状の床から生えたモノはもうひとつあったので、すぐさま下でまつさぽにそのことを話し、リュックをもってふたりで再び屋上へ。  先輩であるおっちゃんの「ひとり」を邪魔しないように、おおっぴらに浮かれず、同じ種類の人間ですよという匂いを放ちながら、白い箱状の床から生えたモノの前にさぽのひいばあちゃんが織ったらしい粋な敷物を敷いて、ふたり読書。 なんつー幸せ。 空は青空、太陽がまぶしい。 カモメはまだしつこくついてきている。  持ってきていた本が池澤の旅行記というのもまたよかった。  1時間ほど、至高の時を過ごし、気づけば隣のおっちゃんもいなくなっていた。  太陽が高い。   しばらくして、ついに佐渡が見えてきた。 なんと意外なことに、佐渡の山脈には雪が積もっている。 はじめそれが佐渡の山だとは思わず、後ろにひかえる大陸のでかい山が見えているのかとおもったが、まさかそんなはずはない。 佐渡といえど、西側の山はフェーン現象でその東の斜面に雪を降らすのか。   2時間20分かけて、佐渡は両津市両津港に到着。 ふたつのかたまりがくっついた島の形のちょうど谷のところ。   きちゃったよ。

さっそく民宿を確保して荷物をおいてしまおうと、案内センターにいき、近辺の民宿を紹介してもらう。 電話で連絡してもらい、支払いをすませたあたりで、「ホテルですけど民宿価格になっておりますから」と、ちょっと得意げにいうおばちゃんの一言。 おいおい。 ぼくらは「民宿」を紹介してくれといったんだよ、なに勝手に「民宿価格のホテル」にしちゃってんだよ。 もうカードで決済しちゃったじゃないかよ。  こういうことが多い。  以前、不動産屋にいき、できるだけぼろっちい一軒家を探している、駅から遠くても歩くの苦じゃないから大丈夫、とさんざんいっているのに、半端に新しめの駅に近いマンションをもってくる。 人の話をきいているのか??  やつらは善意でやっているらしいが、こちらは本当に言葉のとおりに「民宿」だったり「ぼろい一軒家」だったりを求めているのであって、べつに妥協しているわけではないのだ。 ほんとに多いのだ、こういうことが。 散髪のあとのあの意味不明のふんわりブローは、心の底からい・ら・な・い・のだ。  いまさら変えてくれともいえず、ちっとへこみがちで「ホテル」へ向かう。  しかし、あんまりにも美しい海辺の街並みで、どんどんテンションはあがってくる。 瓦屋根と、こい茶色の木の壁の家々、家と家の切れ目から見える、海と緑の細い景色。 いちいち立ち止まらずにはいられない。 これだけでも来た甲斐があったというくらい綺麗。  すれ違う女子中学生が元気よく「さよなら〜」のあいさつ。 不思議だ。  「ホテル」はパンフレットで見るよりもずっと胡散臭く、こちらの好みに限りなく近いものだったのでふたりほっとする。 受付にいたじいちゃんもこれまた胡散臭く、部屋に向かう途中に飾ってある謎の生命体の殻や、佐渡のものでもなんでもない陶芸品の数々、部屋にど〜んと飾られた読書する少女の洋画や、無駄にでかい便所など、見所が満載なのだ。 違った意味で実にいいホテルだ、ホテルシーサイド。 部屋に「さより」だの「めばる」だの「鮭」だの名前がついているのもまたよい。 鮭て…

駅前でレンタカーを借り、午後をつかって海岸線をドライブ。 ほんとは島を一周してみて、そのスケール感を肌で感じたかったのだが、6時でレンタカー屋がしまり、6時半に飯がでるというので上半分で我慢する。 右手に海、左手に山を見ながら島を反時計回りに走る。 楽しい。 特に名所を見るわけでもなく、ただ走る。  一カ所だけ、二ツ亀という、干潮時に陸続きになって渡れるという島に降りてみた。 海岸には大陸からの漂流物がたまっていて面白い。 ヴィ〜〜〜ンと草を刈るおっちゃんのその音、それを燃す煙の匂い、波の音、ハングル文字とアニメキャラが書かれた子供のスニーカー、砂利のような大粒の砂、ウニのような貝のような謎の亡きがら、粘土質の島の壁。 たまらん。   ちょっと前半ゆっくりしすぎたので、時間までたどり着けるか不安になり、とばす。 いくつもの集落を抜け、コンビニがひとつもないことに驚く。 コンビニどころかこの海岸沿いの道には2時間にひとつくらいしか商店らしきものがない。 この道から左にはいったところですぐに山になってしまうため、ここにないということはどこにもないということになる。 う〜ん、リアル自給自足か? すげー。 海と山と田んぼの景色が3時間ほど続き、ようやくちょっとした街らしい街にでた。 たいそう腹がへっていたのでとてもうれしい。 温泉街のようなたたずまいのその街で、ひかくてき大きめの商店に入るが、何故かお菓子の類が異常に少ない。 不思議におもってうろうろしてると、階段を見つけた。 登ってみて愕然。 なんと2階はお菓子・乾物フロアだった。 得意になってさぽを呼び、感激して今夜のつまみを買いあさり、時間がおしているのを思い出して急いで店をでる。 その後は順調に両津に向かい、余裕をもって両津港付近に到着したので酒屋にはいって芋焼酎「いっこもん」を買ってからレンタカーを返す。  また歩いてホテルに向かい、ちょっと体が冷えたので10分だけ風呂につかり、すぐに夕食。 まあ、値段相応のそれなりの料理(本当はもっと海の新鮮な料理盛りだくさんを期待していた…)がでて、ビールを呑みながらそれらを楽しみ、部屋にもどり、買ってきた焼酎とお菓子で一杯やりながら内Pの特番を見る。 幸せ。 さすがに今日は疲れたようで、10時前だというのに強烈な眠気が襲ってきたが、明日のことを考えて、抗うことをせず、素直に屈する。 にしてもなんと楽しい日だったことか!

2005-04-16-SAT

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