No.1059 蔵王ダム

ちゃんす先生首を寝違えたらしく、これじゃ仕事にならんかもしれんから電話つながるようにしててな、といわれ、計画していた蔵王ダム上流散歩をあきらめ、唐松観音近くの河原(関沢に向かって286を登り、橋を渡ったところ)にロケハンにいく。 ここ、近くにトイレも水道もあって、堰堤の淵沿いにちょっとした広場が作られていて、車も入っていけて、と実はオートキャンプの穴場なのだ。 堰堤直下の淵があるってのがすばらしく、つまりつねにテントからライズを見張っていて、始まったら釣りに行くというとんでもなく贅沢な遊びができてしまうのだ。 すごい。 さすがに地元の人はこんないいところを見逃すわけもなく、今日も5〜6台の車が占領し、家族同士のバーベキューパーティーがはじまった。 しかしテントを張って泊まる人はそれほど多くはないようで、前の日から泊まっていれば我のサイトは確保できるので心配ない。 昨夜もここにしようか古龍湖にしようかはじめ迷った。 せっかくなので唐松観音を拝み、周辺のロケーションに感動する。 今年いちばん夏らしい夏を感じた時間だった。 琴線がばちばち掻き鳴らされ、こうなると古龍湖キャンプ場も見てみたいと盛り上がり、30分後には見知らぬ山奥の湖のほとりでうっとり。 こんな夏の原風景がこんな近くにあったとは。 とにかくオニヤンマの数がすごい。 蝉の声が太い。 大気がここだけ隔離されていて、自分が小学生だった20年ぐらい前の雰囲気がそのまま沈着してのこっている感じなのだ。 とくに絶景だとか、なにかすごいというわけでもないんだけど、その「夏休みらしい空気」の濃度が強烈で、それがなによりありがたい。 しばらく湖周りを歩き、トカゲやら鯉やらみて楽しみ、よし次は泊まりだ、と満足して車にもどる。 電話のアンテナがたっていないことに気づき、慌てて市街地へ。  すぐにちゃんすからの電話。 案の定ちゃんす先生は早退、迎えにきてくれの電話をいれていたがつながらなかったらしく、途中まで帰ってきたがもううごけんのでそこまで迎えにきてくれとのこと。 すぐに向かい、ひろい、家に帰る。 安静にしてる他ないだろうから安静にしてなさいといってぼくは車検の見積もり+受付にでかける。 思いの外待たされていらいらする。 1時間ほどで受け付け完了。 で、午前中いけなかった蔵王ダム上流散歩。

以前来たときはなにも準備しないできたので、途中の川越ができずに断念したが、今日は濡れても大丈夫な靴をはいて、釣り竿ももってでかける。 ダムの管理棟奥の柵を乗り越え、ダム湖沿いに1キロほど歩くと川が現れ、道はそれをまたぐ橋となる。どうなっているのかしらと橋を越えて道を進むがどこまでいっても同じ景色なので深入りせんうちに引き返し、目的であるはじめの川を歩いて登る。 水が冷たくて気持ちいい。 水にはいらなくても街中とは気温が5度ぐらい違うんじゃないかしら。 しばらく歩くが、どうも魚の気配がまったくない。 しかもお気楽に短パンで来てしまったため、深い藪に入る気になれず、そうしないと超えれない堰堤がでてきたためあまり楽しめないうちに引き返すことに。 ダム湖を右にみて落石をよけ泥泥をよけして歩いていると、後ろからシャーっという聞き慣れた人工物の音。 まさかと振り返ると、なんと全身ばっちり決め込んだフライマンのおっさんが赤いかっちょいい自転車にのって山道を走り降りてくる。 ふは! すげー。 いろいろ聞きたいことが在ったのだが声をかける暇もなくみるみる小さくなっていなくなってしまった。 やる。  車に戻ると白髪にサングラスのじいさんが声をかけてきた。 「釣れましたか?」  気配すら感じなかった、ダムの上しばらくは魚は居ないもんだと了解して帰ってきた旨話すと、「でかい岩魚がいるらしいけどね」だと。 まじか!? そもそもぼくはここに何を求めてきたかといえば、こんなとこまで釣りに来るやつはあまりいないだろうし、ダムより上ってーとなんかこう源流域の混じりっけなしの原種がプリプリギンギンとして泳いでいてそれがかわいらしい程に無垢で、なんて幻想を抱いてきたわけで、しかし実際にいってみるとダムの上とはいえ結局はどこまでも堰堤で細かく区切られてしまってこれじゃ気配がなくてもしょうがないと、すっかり居ないもんだとおもって帰ってきたのだ。 そこに「でかい岩魚がいるらしいけどね」ときた。 おじいさん、それはまさにぼくが心に描いていたプリプリギンギンの無垢なあいつなんですね??  すぐさま踵を回らし、今度はフル装備で向かう。  やはりフェルトの靴底は頼もしい。 ウェーダーは厚いが藪こぎもへいちゃらだ。 ちょっとのきらめきも逃さないハンターの目で水面に注意をはらい、気配を殺して川を登る。 すぐに現れる堰堤は右の道から迂回。 またしても堰堤。 今度はどっちからも登れそうもない。 途方にくれてうろうろする。 左の藪を死ぬ気で越えれば登れんこともないようだ。 急斜面、トゲトゲの植物、足下にあるかもしれんスズメバチの巣の驚異、ひっかる竿、そうとう難儀した。 なんとか登れた。 いかにもいそうな渓相になってきた。 淵に何度か流す、が、まったく反応がない。 というか、やはり気配がまるでない。 季節と時間も最悪といえばそうなのだが、しかしこういる感じがまるでない。 そうこうしてるとまた堰堤。 堰堤の間隔がやたら狭い。 今度のは本当にどうしても登れそうもなく、無理に左の急斜面から巻いていったとしても、帰る時の尋常でない難儀をおもうと行く気になれない。 しかもさっきから雷鳴がしだしたのがとても気になっている。 時間もこれからどんどん暗くなってくるという5時前。 今日は無理せずに帰ることにした。  そのまま車に帰るにしては少し早いので、せっかくなので最初に橋を越えて歩いた道の調査をもうちょっとだけ進めて帰ることにした。 途中登山帰りのおっちゃんとすれ違う。 「釣れたか?」 「気配すらせん」 「はは」  登山帰りのひとがきたということは、この道は今はダム湖に沿って下っているようだが長期的にみればそのダムに流れ込む川の左岸の道としてどんどん源流に向かう道だということである。 なるほど地形が見えてきた。 入り口にあった地図の記憶と実際歩いているこの道の認識とが頭の中で意味をもって通じる。 楽しい。 しかしおそらくこの調子だと川にいくのにまだ数キロ歩かなくてはいけない。 戻りを考えると距離は倍。 雷鳴のインターバルは確実にさっきより狭まってきている。    帰ろう。    判断は正しく、車に戻り、ウェーダーを洗い、出発してまもなく驟雨。 今年一番くらいの激しさ。 ワイパー最速でもおっつかん。 もっと行ってたら本気でやばかったわ…  今度は早朝にきて、10キロくらい登る覚悟で挑もうぞ。

2005-08-21-SUN

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