No.1139 それじゃ読めんよ、ミミ

外で食事をし、本を読み、ミクロを買って、と好き放題していたら、ずいぶん家に帰るのが遅くなってしまった。 今夜はちゃんす不在なので、我が家のうんこをちょっと出しっぱなし(歌もある)の頭の小さなミミは大変なご立腹で、帰るなりそれはすごい罵詈を浴びせられた。 申し訳ないと平謝りし、背中や股を撫で倒し、思う存分手の平を噛ませ、美味しいご飯を出してさしあげ、と、出来うる限りのいたれりつくせりをしばらくがんばり、謙るのももうこのくらいでいいだろうと小さな頭を見くびり、何事もなかったように布団にはいってアンナ・カレーニナの続きを読みはじめる。 しばらく集中して読んでいると、食事を終えて甘えモードにはいったミミが、うつぶせになって本をもつぼくの手に体をネリネリとこすりつけてきた。 なんとまあ、かいらしーと思っていたのもつかの間、段々と大胆になってきたミミは、当てつけのようにぼくの顔と本の間の狭い空間に無理矢理捻り入ってきて、先ほどまで目の前に頭の中に広がっていたドイツの温泉場での若いロシア娘の偽善と献身の間に揺れ動く心は一転ふさふさとした真っ白な虚無に覆われた。 「ひえはいはらほいへよひひ」と頼んでも、ひひ、もといミミは心地よい暖かな吐息を楽しむばかりでそこを動こうとはせず、終いに開いた本のその小さなベッドの上に無理くり乗って丸くなり、うっとりとして眠ってしまった。  絶句。  なんつー独占欲の強い猫か知らん。 家人が自分を放って活字と戯れることさえ妬ましく、そしてそのにっくき相手を瞬時に己の喜び(ちいさな不安定なベッドに目がない)に変えてしまうこの前向き。 美しきエゴ。

2005-09-12-MON

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